《地名》【女性名詞= a Bahia】
ブラジル北東部の州。
アフリカから多くスーダン系やバントゥー系などの多様な民族がバイーア州へ奴隷として連れていかれた。また、カポエイラのメッカとされている州都サルバドール(Salvador)のカポエイラが他の州(ミナスジェライスやサンパウロ、リオデジャネイロなど)に伝播して、近代スタイルのカポエイラ・コンテンポラニア(Capoeira Contemporânea)などに発展した。
【男性名詞】
カポエイラ・ヘジョナウの創始者のメストリ・ビンバ(Mestre Bimba)が考案した型「cintura desprezada」で使われる4つの投げ技の総称。
ヘジョナウ以前から“balão”があったともいわれ、現在は他にもいくつかの種類がある。
一般的に“balão”は「気球」や「風船」の意味で、投げ技はポルトガル語で“técnica de projeção/arremesso”という。
【男女同型名詞・形容詞】
①猛者、強者、剛勇(valentão/valentona)
②〜に精通した、達人(mestre/mestra)
【語源】
キンブンド語の「mbamba=達人」とされ、キコンゴ語の「ebamba-ngolo=剛勇」との説もある。
【類語】
bambambã バンバンバ
※全て鼻母音なので発音は難しい
【男女同型名詞・形容詞】
①前歯が欠けている(人)
【女性名詞】
②カポエイラのトーキ(リズム)・ジョーゴの名称(Banguela)
今では、カポエイラ・ヘジョナウの創始者メストリ・ビンバが考案したジョーゴ(jogo)・トーキ(toque)と認識されているが、ヘジョナウ以前からあったとされる。
昔はカポエイラ・アンゴラでも使われ、「ナイフを使った活気のある・至近距離のジョーゴ」(jogo vigoroso/de dentro com faca)だったようで、“Benguela”(ベンゲーラ)とも呼ばれた。最初が「バ」か「ベ」だけの違いだが、後者はアフリカのアンゴラの都市「ベンゲラ」を指す。
また、バンゲーラの名称は「スピードを落とす」意味の表現“na banguela”(車のギアがニュートラルで動いてる状態)が由来で、ジョーゴの目的を表すという解釈もある。
なお、ABADÁ-Capoeiraの“Benguela”(ベンゲーラ)は別のトーキ・ジョーゴである。
【男性名詞】
①アフリカ中南部に分布する数百の言語の総称(línguas bantas)
②バントゥー(バンツー)語系諸族の総称(povos bantos)
③ブラジルへ奴隷として連れ去られたバントゥー語系諸族に属する者(出港地にちなんでアンゴラ、ベンゲラ、カビンダ、コンゴ、モザンビークと呼ばれた奴隷)
banto/banta バントゥー・バンター
【形容詞】
④(上記①~③)バントゥーの
大西洋奴隷貿易により、16世紀から19世紀前半にかけてアフリカから約400万人が奴隷としてブラジルへ連れ去られ、その中で大半を占めたのはアンゴラ地域のバントゥー系民族とされている。
【女性名詞】
太鼓などを打ち鳴らす木製の細長いバチのこと。
カポエイラでは、ビリンバウ(berimbau)の弦を鳴らすために使われ、破魔の力があるとされる”ticum/tucum”(ヤシの一種)で作られたものが人気である。
なお、カンドンブレのアタバキ演奏で使われるバチは“oguidavi/aguidavi”(オギダヴィ、アギダヴィ)とも呼ばれる。
【女性名詞】
①バッテリー、蓄電池・乾電池
②ドラムセット
③カーニバルの打楽器隊
④カポエイラの楽器隊
他に医療や軍事などの語義もあるが、カポエイラではバテリアは “charanga”(シャランガ)とも呼ばれ、ヘジョナウのビリンバウ(berimbau)1本とパンデイロ(pandeiro)2枚の編成を指すことが多い。
アンゴラやコンテンポラニアのバテリアは、ビリンバウ(3本)やパンデイロ(1〜2枚)、アコゴ(agogô)、ヘコヘコ(reco-reco)、アタバキ(atabaque)が一般的な編成だが、楽器の並びや演奏方法はグループによって違う。近代スタイルが確立する前、ビリンバウの数や楽器の編成が現在と異なり、12弦ギターも使われていたといわれている。
【男性名詞】
①洗礼(batismo)が行われる儀式
②カポエイラの最初の昇級式
batizado/batizada バチザド・バチザダ
【男性・女性形容詞】
①キリスト教の洗礼を受けた人、または祝福が与えられた物
②ある団体に入団した人
③カポエイラの最初の昇級式を通過した人
カポエイラのバチザドはヘジョナウの創始者メストリ・ビンバ(Mestre Bimba)によって取り入れられ、当初はビリンバウの下で初心者が初めてするジョーゴ(jogo)のこと指し、その後に“festa de batizado”、つまり洗礼式が正式に行われ、カポエイラの四股名ともいえる“apelido”(アペリード=あだ名)が付けられた。
創立当初のヘジョナウでは、バチザドを経てから基礎コースに入り、修了生に“formatura”(修了式)で青いスカーフが与えられ、任意参加で護身術の専門コース1(赤スカーフ)と対武器の専門コース2(黄スカーフ)が実施された。今はメストリ・ビンバの息子であるメストリ・ネネウ(Mestre Nenel)が率いる本家のFilhos de Bimbaが当時のやり方を復活して引き継いでいる。
バチザドはアンゴラ以外のスタイルで最初の昇級の際に行われ、カポエイラ界に受け入られた重要な節目として通過儀礼の意味合いを持つ。また、バチザドと一緒に昇段級式(troca de cordas)も行われることが多く、各団体の段級位制が定める色別の帯(corda, cordão, cordel)が与えられる。
【男性名詞】
①一定のリズムで何かを叩いて音を出す行為
②打楽器中心の音楽や時には歌と共に行われるアフロ・ブラジル由来のダンスの総称。
③バイーア州のアフロ格技(現在は途絶えたとされている)。古典的カポエイラの格闘技色を強めるためにバトゥーキの技がメストリ・ビンバ(Mestre Bimba)によってカポエイラ・ヘジョナウ(Regional)に取り入れたとされる。別名 bate-coxa(バチ・コーシャ)
④LAに本部があるメストリ・アメイン(Mestre Amen)率いるカポエイラ団体「Capoeira Batuque」のこと。日本支部サイトはこちら。
⑤コミックス累計発行部数1000万部超の大ヒット『嘘喰い』で知られる人気漫画家の迫稔雄氏が画くカポエイラをテーマにした世界初の漫画のこと。連載はこちら。
①アフリカ南西部、アンゴラ中西部の大西洋岸の港湾都市。大西洋奴隷貿易によって、ベンゲーラから多くの人がブラジルへ奴隷として連れていかれた。
②世界最大級のカポエイラ・コンテンポラニアのグループABADÁ-Capoeiraの代表メストリ・カミーザ(Mestre Camisa)が考案したジョーゴ・トーキで、ヘジョナウの“Banguela”(バンゲーラ)と違うものである。
【男性名詞】
弓の弦をバチ(baqueta=バケータ・バケッタ)で鳴らすカポエイラを代表する楽器(楽弓=arco musical)。
ちなみに、カポエイラと音楽の関係について、格闘技であることを隠し、ダンスに見せかけるために音楽が取り入れられたのか、最初から音楽と共に行われていたのか、はっきり分かっていない。また、ビリンバウについても、いつからカポエイラに取り入れられたのか大きな謎とされている。
ビリンバウは、その昔、口琴「berimbau de boca」(ビリンバウ・ジ・ボッカ)を指したが、19世から瓢箪を共鳴器として腹部の前で演奏する楽弓「berimbau de barriga」(ビリンバウ・ジ・バヒーガ)も単に《ビリンバウ》と呼ばれるようになった。
同義語: arco musical, aricongo, aricungo, berimbau de arco, berimbau de barriga, bucumbumba, gobo, gunga, macungo, marimba, marimbau, matungo, mutungo, oricongo, oricungo, orucungo, ricungo, rucungo, uricongo, urucango, urucongo, urucungo, etc.
バイーア州内陸部(Recôncavo Baiano=ヘコンカヴォ・バイアーノ)の伝説的なアウトローとされたカポエイリスタ(カポエイラ使い)「Besouro Mangangá=ビゾウロ・マンガンガー」の略称。本名マノエウ・エンヒッキ・ペレイラ(Manoel Henrique Pereira, 1897-1924)。
本来、ビゾウロは「甲虫」のことだが、マンガンガーは「熊蜂」の俗称。追い詰められた時、まるで羽が生えてどこかへ飛んで行ったかのように姿を消すことが出来たのが由来。
また、別名Besouro Cordão de Ouro=ビゾウロ・コルダォン・ジ・オウロとも呼ばれる。
楽弓ビリンバウ(berimbau)作りに好まれる木材。学名:Eschweilera ovata (Cambess.)。詳しくは久保原氏のカポエイラ研究室「7:ビリーバを知っていますか?」が勧め。
お守り、魔除けのこと。護符などが入った革または布で出来た小さな袋で、ブラジルの民間信仰カンドンブレ(Camdomblé)の宗派によってはパトゥアー(patuá)とも呼ばれる。また、西インド諸島のブードゥー教ではモジョ(mojo)の名で知られる。